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CATEGORY 家族と台所

キッチンのありかた

キッチンを、「食事を作る場所」と捉えると、「キッチン」とは呼べないかもしれない、太古の昔の「炉」から「キッチン」は随分と変化してきました。

私は「キッチン」って面白いなぁと思い、「キッチンのありかたによって、コミュニケーションのありかたも変わってくるのだなぁ」と思ったのは、バブル期後期にインテリアの勉強をしていた頃でした。

キッチンのショールームを何ヶ所も巡り、カタログを集め、本を読み、思ったことは「キッチンはもっと自由であっていい」ということと、「キッチンのレイアウト次第で作業性だけでなく、コミュニケーションも変わってくるのだ」ということでした。

何台もキッチンを見て、印象的だったキッチンはふた通りあって、ひとつはプロが使うキッチンのように中華鍋を大胆に使えるようなガスコンロを設置したスタイル、そしてもうひとつは、オープンなアイランド型で家族や友人達でキッチンを囲み、共同で食事を作りながらコミュニケーションを楽しくとれるようなスタイルでした。

それはそれまで私が普通に見ていた、背中を見せてキッチンに向かう閉鎖的なイメージからかけ離れたもののように思えました。母親が家族の夕食を作るために家族に背中を見せるのは当たり前だった時代に育ってきた私には衝撃的にも思えました。

その対面式スタイルは、今となっては当たり前のスタイルになっていますが、日本ではキッチンは土間に台所があった時代、北向きの部屋に独立して台所があった時代もあったものです。

それが洋風化でダイニングキッチンという概念が生まれ、家族に背中を向けるのは変わらないまでも食卓の近くにキッチンが設置される時代をへて、今ではLDK時代になり、家族が集い寛ぎ食事をする空間の中にキッチンがある時代になりました。

それが現代のキッチンの姿ですが、縄文弥生時代はどうだったのかというと、戸外で煮炊きしたり、炉のある場所で煮炊きしたりしていたのです。火のある場所に自然と人が集まり、会話を楽しみながら食事をつくり食べていたのですね。

日本では古くは「台所」あるいは「流し」と呼び、「配膳するところ」「水を流して作業するところ」が「キッチン」でした。
「キッチン」という英語の語源は「クッチーナ」というイタリア語が変化したものですが、「クッチーナ」は囲炉裏、かまどのような調理の為の「火」を扱う場所という意味があります。

私がバブル期後期に体験した「火元」と「キッチンを囲む」という概念に強く心揺さぶられたのはそんな意識が芽生えたのかもしれません。

ひょっとしたら現代の食の風景は、食の原点に立ち戻ったのかもしれませんね。

食事はみんなで戴くと美味しいものです。